水星note -すいせいのおと-

 (2018年発表)

全作詞・全作曲 水星

編曲・演奏・歌唱 YOSSEY

 

デリカシー

 

あなたが依存しているのは朝の星占い

統計と偶然に批判的な心を誤魔化せるの

そんなあなたと話したい事は何も無い

そんなあなたに問いかけたい事は何も無い

だって僕に欠落しているのはデリカシー

繊細な気遣いと優しさに満ちたデリカシー

おお 今日は晴れ 空は晴れ

目を閉じても晴れ

 

あなたが依存しているのは真っ赤なドレス

燃えるような色彩で病的なうつろいを誤魔化せるの

そんなあなたと交わしたい事は何も無い

そんなあなたと確かめたい事は何も無い

だって僕に欠落しているのはデリカシー

罪の無い台詞と指先も触れないデリカシー

おお 今日は雨 ひどい雨

部屋の中でも雨

 

あなたが依存しているのは携帯電話

ソーシャルネットワークとメールに時の経つのも忘れ

そんなあなたと語り合う事は何も無い

そんなあなたと打ち解け合う事は何も無い

だって僕に欠落しているのはデリカシー

曖昧な返事を優しく受け止めるデリカシー

おお 今日は風 強い風

どこに隠れても風

 

街を白く彩る雪は

積もり過ぎないように

口づけの甘いやり取りは

お互いの息が出来る程度に

 

あなたが依存しているのは昔の恋人

悲しい台詞と心のカモフラージュを鮮やかに決めて

そんなあなたと話したい事は何も無い

そんなあなたに問いかけたい事は何も無い

だって僕に欠落しているのはデリカシー

絶妙なタイミングで抱きしめるところのデリカシー

おお 今日は夢 きっと夢

眠らないのに夢

 

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廃墟

 

朽ち果てた遊園地の回転木馬は

幾千の子供達の笑顔を乗せてきたの

くすみゆく色彩は遠い日のカラフル

錆びついた鎖 夏草の声

新しい日曜日の嬉しさを貼り付けた

アルバムは閉じたまま開くことも無かった

 

潰れたラブホテルの傾いた天井は

幾千の愛情と嘘を見下ろして来たの

ひび割れた壁も床も窓ガラスも

建物の所有者は行方知れずのまま

お姫様と王子様の甘い夢の空間は

ハリボテの装飾とアスベストの四畳半

 

この世の欲望と目論見と想定外が

混ざり合った楽園の結末 それが廃墟

記憶を辿る人に過ぎし日の郷愁を与え

好奇心で足を運ぶ人に未来を垣間見せる廃墟

 

 

区画整理で記憶まで片付けられたこの街で

君と僕の切なさは青白い走馬灯

失うまで全部あたりまえの日常

巻き戻すネジは見つかる筈もなく

憧れを育んだり 訳もなく寄り添ったり

分かり合えた時には遠く離れ過ぎていた

 

誰もが生きる為に何かを捨てて行くから

人々は幸せの数を三つ以上数えようとしない

誰もが笑う為に何かを壊してゆくから

人々は悲しみの数を三つ以上語ろうとしない

 

神様は何処かにいる

居るだけで何もしない

祈りを捧げてみても

神様は眺めているだけ うっ

 

明日への可能性と憂いの背中合わせが

混ざり合った終焉の心が それが廃墟

ひび割れた終焉の心が それが廃墟

 

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四コマの憂鬱

 

期待に胸を弾ませて

洒落たレストランでひとりのランチ

待てど暮らせど出て来ない

ランチタイムも終わる頃

忘れ去られたオーダー

ひとり黄昏た午後の2時

お客はみんな帰った

美味しく食べて帰った

 

思春期の頃の教室で

先生がみんなに聞いたのは

このクラスの中で親友が

いる人がいたら手を挙げて

手を挙げたのは僕だけ

クラスの中で僕ひとりだけ

友達はみんな帰った

それぞれのお家に帰った

 

ことりの雛が親鳥に

首を傾げて聞きました

自由になるってどういう事

母さん鳥は言いました

大空をその翼で

思いのままに飛び回る事よ

それなら僕は大人に

なったら自由になれる筈だね

 

四年前に喧嘩して

別れた恋人と街角で

偶然出会ってすれ違う

視線は一瞬重なって

振り返ったのは僕だけ

立ち止まったのは

僕の方だけ

あの娘は一人で帰った

振り向きもせずに帰った

 

鳥たちは森へ帰った

夕焼けは海に帰った

思い出は過去に帰った

星たちも空に帰った

 

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4対6

 

彼の中身は4対6の形

6割が嘘で4割だけが欲望

きれいごとだけ並べてみましょうか

絵空事だけ唱えてみましょうか

あの娘の中身は4対6の形

6割が夢で4割だけが妄想

化粧の数だけ並べてみましょうか

着飾った服を数えてみましょうか

誰か二人を救って

恋の終わりを教えて

乾いた心 濡らしてあげてよ

 

明日の天気は4対6の形

6割が雨で4割だけが曇り

傘を片手に砂漠を歩こうか

月も滲んでラクダが泣いている

今の季節は4対6の形

6割が冬で4割だけが早春

桜の蕾みに風花が咲いている

見えない風から人々が逃げている

誰か答えを教えて

マスコミのカラクリを教えて

難しい言葉の羅列を笑ってよ

 

いつも仕事は4対6の形

6割が事務で4割だけが営業

本音を集めて並べてみましょうか

建前だけを唱えてみましょうか

人の心は4対6の形

6割が過去で4割だけが現実

過ぎた時間に浸ってみましょうか

怖い夢なら忘れてみましょうか

すぐに答えを探して

時の魔力を感じて

満ち足りた人々に教えてあげてよ